医療法人設立時の基金はいくら必要か?

設備の簿価と2ヶ月分の運転資金

 医療法人設立時の財産は基金を拠出するか寄付するか2通りあります。

 基金拠出する資産の金額がいくら必要かは開設する診療所の規模にもよりますが、認可申請の財産面での審査のポイントはこちらです。

 医療法人設立後に診療所を運営できる設備と資金を確保できているか?

 どういうことでしょうか?具体的に考えてみましょう

個人資産、個人名義の契約を医療法人に

 個人で開業した診療所は、建物、内装設備、医療機器等をそろえていますが、すべて医師や歯科医師の個人資産であったり、個人名義で建物賃貸借契約やリース契約を結んで確保しています。

 また、資産を購入する際の金銭消費貸借契約を結んで借り入れた借入金も個人の負債です。

 医療法人設立認可申請の審査では、医療法人を設立した時に診療所を開設できるかどうかチェックされます。

 ✔ 診療に必要な設備で医師の個人資産が医療法人の資産になるかどうか?

 ✔ 個人名義での賃貸借契約を医療法人を引き継ぐことができるのか?
  大家さんやリース会社が承諾しているのか?

 ✔ 負債を医療法人が引き継ぐことを金融機関が承諾しているか?

 医師の個人資産である診療に必要な設備などは医療法人に現物を基金拠出して医療法人名義の資産にします。

医療法人設立時に拠出できない資産

一括償却資産は簿価がないので資産としては拠出できません。
ですので、購入のための負債も引き継げないことになります。

通勤用車両は、最近は拠出を認められなくなりつつあります。
訪問診療や患者送迎用の車両はもちろん拠出できます。

償却中の繰延資産、たとえば開業費用や医師会入会金などは拠出できません。


2ヶ月分の運転資金を確保しているか

 医療法人設立後は、個人開設の診療所を廃止して、医療法人として新たに診療所を開設することになります。

 診療自体は途切れることなく継続するので、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会からは、引き続き毎月下旬に振り込みがありますが、個人開業時代の診療報酬は医師個人名義の銀行口座に、医療法人設立後の診療報酬は医療法人名義の銀行口座に振り込まれます。

 ということは、医療法人設立直後は、法人としての保険診療収入の保険者負担分が2ヶ月間は振り込みされないので、もろもろの支払いのためにその間の2ヶ月間の運転資金を現預金で保有しておく必要があります。

基金はいくらで設定すればよいのか

資産簿価と運転資金を合計して端数調整

建物内装設備や医療機器等の設備資産の簿価を計算

 前年の青色申告決算書に添付してある償却資産一覧表をもとに、1月1日から申請時期ごとに指定された基準日までの月割償却分を差し引いた、基準日時点の償却資産残高が簿価となりこの金額で基金拠出します。

 青色申告決算書の簿価(前年12/31時点)
-今年1/1から基準日までの月割償却分
———————————————-
    設備資産分の基金拠出金額

STEP
1

建物の敷金・保証金などを計算

 建物を借りている場合には、賃貸借契約を大家さんと医療法人との契約になるので、敷金・保証金を医療法人の資産として基金拠出します。

 敷金・保証金の拠出額は賃貸借契約書で合意した金額で、無形固定資産として計上している金額です。 

東京都の場合は敷金・保証金から解約時に償却される金額を差し引いた金額のみ医療法人に基金拠出します。

STEP
2

2ヶ月分の運転資金を計算

 運転資金は設立後2ヶ月間に見込まれる現金支出から現金収入を差し引いた不足金額を最低ラインとして、多少の余裕をもたせて金額を決定します。

 この段階では、おおまかに必要金額を把握します。

 2ヶ月分の運転資金を具体的にどのように計算するかは「医療法人設立時の運転資金をいくらにするか」で詳しく説明しています。

STEP
3

拠出する資産の購入、支払いのために借り入れた負債の残高を計算します

 医療法人設立時に基金拠出する建物内装設備、医療機器、敷金・保証金の購入、支払いのために金融機関から借り入れを行っている場合には、その部分を医療法人に引き継げますので、マイナス資産として基金拠出します。

 医療法人に引き継ぐ負債の金額は、金銭消費貸借契約を結んだ時に金融機関が発行する返済予定表をみて、基準日時点での借入残高を確認してマイナス計上します。

✔ 運転資金のための借り入れは負債残高があっても、医療法人に引き継げませんので、設立時のマイナス資産として基金拠出できません。

✔ 診療所開設のタイミングでまとめて購入した消耗品や一括償却資産の支払いのために借り入れも負債残高があっても、医療法人に引き継げませんので、設立時のマイナス資産として基金拠出できません。

STEP
4

基金の総額をきりのいい金額にする

 MS法人として株式会社を設立したことのある院長は、MS法人の資本金を円単位ではなく、少なくとも100万円か10万円単位できりのいい金額を出資したのではないかと思います。

 医療法人を設立する際に基金拠出する建物内装設備や医療機器等の設備資産の簿価は、円単位で計算するのでどうしても端数が出てしまいます。
 また、負債を引き継ぐ場合には、基準日時点での負債残高も円単位で端数が出てしまいます。

 そこで、基金の金額をきりのいい金額にするコツは運転資金を円単位で調整することです。

 基金拠出の合計額をきりのいい金額にすると、医療法人設立後の帳簿上の管理がしやすくなります。

 というか、見栄えが良くなるので、おすすめします。

STEP
5

たとえば

内装設備 12,345,678円
医療機器  7,654,321円
建物敷金 5,000,000円
運転資金  4,000,000円以上
負債残高▲20,000,000円

この場合に、運転資金ができるだけ少なくしたいと考えると

運転資金4,000,000円 基金8,999,999円

これを端数調整すると

運転資金5,000,001円 基金10,000,000円

医療法人設立時に拠出した基金の返還

医療法人設立時に拠出した基金の返還については「医療法人設立時に拠出した基金の返還」で説明しています。

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